「このシミ、美容レーザーで消せるかな?それとも病気のサイン?」
「治らないニキビ、美容クリニックの高い治療を受けるべき?それとも病院?」
「乾燥?マスクのせい?原因がわからないこの肌荒れ、どこに相談すればいいの?」
そんな肌のトラブルに悩んだとき、皮膚科と美容皮膚科、どちらに行けばいいのか迷いますよね。
どちらも皮膚の専門家ですが、対応できる目的はまったく異なります。一つは「病気の治療」、もう一つは「美しさの追求」です。
この記事では、皮膚科と美容皮膚科の決定的な違いをわかりやすく解説していきます。症状や目的に合った選択を見つけるためのヒントにしてください。
皮膚科と美容皮膚科の違い

同じ肌悩みを相談するにしても、皮膚科と美容皮膚科ではアプローチ方法や目的が根本的に異なります。まずは基本的な違いを理解して、どちらが自分の目的に合うかを見極めましょう。
<皮膚科と美容皮膚科の違い早見表>
| 項目 | 皮膚科 | 美容皮膚科 |
| 診療の種類 | 保険が使える医療(公的医療) | 保険は使えない自由診療 |
| 医師の資格 | 皮膚科専門医(病気や皮膚トラブルのプロ) | 医師免許必須。美容施術の資格を持つことも |
| 対応する症状 | ニキビ・湿疹・肌荒れ・アトピー・水虫・帯状疱疹など、日常的な皮膚のトラブル全般 | シミ・そばかす・ほくろ除去・脱毛・しわ・たるみなど、美容目的の施術 |
| 治療方法 | 内服薬や外用薬で医学的に治療 | レーザー治療・光治療・ピーリング・ボトックスなど、美容施術中心 |
| 費用 | 窓口負担は原則3割(薬代も含めて比較的お手頃) | 全額自己負担(少し高めですが、美容施術が受けられます) |
| どんな人向き? | 病気や炎症をしっかり治したい人 | 肌をきれいにしたい、見た目を整えたい人 |
では、違いを3つのポイントにわけて詳しくみていきましょう。
保険診療と自由診療
皮膚科と美容皮膚科の大きな違いは、診療が保険で受けられるか、保険外の診療かです。それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 皮膚科:肌の病気を治すための診療で、健康保険が使えます。窓口負担は1割から3割で、薬代も含めて比較的費用が安く済むのが特徴です。
- 美容皮膚科:肌をきれいに保つための美容目的の施術が中心で、保険は使えません。施術の幅は広いですが、全額自己負担になります。
保険診療か自由診療かの目安は、「病気の治療が目的か」「見た目の改善が目的か」です。公的な医療が施される症状か、美容の追求のために公的な医療以外を受けるかで変わります。
医師の資格・専門性
皮膚科と美容皮膚科の先生は、どちらも医師免許を持っています。医師免許は、施術を行うための最低限の資格です。そのうえで、さらに専門性のある資格やトレーニングを持っている先生もいます。
皮膚科の先生の多くは、皮膚科専門医(※1)の資格を持っています。皮膚科専門医とは、医学部を卒業して医師免許を取得したあと、大学病院などで数年以上の研修を受け、専門医試験に合格した医師に与えられる資格です。皮膚の病気やトラブルの診療を安心して任せられる目安になります。
美容皮膚科の先生のなかにも、皮膚科専門医の資格を持っている人はいます。ただし、美容皮膚科自体の公的な資格はありません。そのかわり、美容医療で使うレーザーや注射などの機器や施術について、しっかりトレーニングを受けていることが多く、美容目的の施術に強いのが特徴です。
※1 皮膚科専門医:公的な専門資格であり、日本皮膚科学会が認定しています。
治療内容・対応できる症状
皮膚科では、ニキビ・湿疹・肌荒れ・アレルギー性皮膚炎・水虫・帯状疱疹など、日常的に起こる皮膚トラブル全般を扱います。内服薬や外用薬を使って、医学的に症状を改善するのが基本です。
※まれに皮膚科で扱わない重い皮膚疾患は、専門科を紹介されることがあります。
一方、美容皮膚科では、ニキビ跡・シミ・そばかす・ほくろ除去・脱毛・しわ・たるみなど、美容目的で改善したい症状が中心です。レーザーや光治療、ピーリング、ボトックス注射などを用いて、見た目の改善に重点を置きます。
ざっくりいうと、病気の治療や炎症を抑えたい場合は皮膚科、見た目も含めて美しくしたい場合は美容皮膚科が目安です。症状別の詳しい解説は次章で紹介します。
症状別|皮膚科と美容皮膚科、どっちがいい?

ここからは、具体的な症状に応じて、皮膚科と美容皮膚科どちらがいいのかを詳しく解説します。
ニキビ・肌荒れなど、同じような肌の悩みでも、治療の目的やどう改善したいかによって選択肢が異なります。自分の症状に合わせて最適な場所を選べるように参考にしてみてください。
ニキビ・吹き出物・大人ニキビ・背中ニキビ・ニキビ跡
「このニキビ、どうにかしたいけど…」そんな時は、まず皮膚科での保険診療が基本です。皮膚科では、炎症や菌のコントロールが治療の中心となり、抗生物質や外用薬で症状を改善します。思春期ニキビはもちろん、生活習慣やホルモンバランスが影響しやすい大人ニキビも、まずは根本的な治療が重要です。
ただし、炎症が治まった後に残るニキビ跡やクレーターが気になる場合は、美容皮膚科が適しています。クレーター状のニキビ跡や色素沈着は、保険診療の範囲では改善が難しい場合が多いため、自由診療での治療が効果的です。ピーリングやレーザー治療(フラクショナルレーザーなど)で肌の再生を促し、滑らかな肌を目指します。
背中ニキビも同様に、まずは皮膚科で炎症を抑えてから、美容皮膚科で跡の治療を考えるという段階的なアプローチが有効です。
肌荒れ・赤み・敏感肌トラブル(酒さ含む)
一般的な肌荒れや赤みは、皮膚科での対応が基本です。接触皮膚炎やアレルギー性皮膚炎など、原因を特定して適切な薬物療法をおこなう必要があります。
原因不明の肌荒れや慢性的な赤み(酒さなど)は、自己判断で市販薬を塗ると悪化することもあるため、必ず医師の診断を受けましょう。
皮膚科での診断後、症状によっては美容皮膚科での施術も選択肢として検討できます。レーザー治療や特殊な光治療が、赤みや敏感肌の改善に役立つことがあります。まずは皮膚科で原因を特定し、その上で必要に応じて美容皮膚科での治療を検討するという流れがおすすめです。
- 一般的な肌荒れ・赤み:皮膚科で原因の特定と治療
- 酒さ・慢性的な敏感肌:皮膚科での診断後、美容皮膚科での施術も検討
毛穴・小鼻の赤み・鼻の黒ずみ・毛孔性角化・毛孔性苔癬
毛穴のトラブルは、炎症がある場合は皮膚科、見た目を改善したい場合は美容皮膚科と、目的によって対応が異なります。
毛穴の黒ずみや開き、小鼻の赤みには、美容皮膚科での施術が効果的です。ハイドラフェイシャルやケミカルピーリングで毛穴の汚れを取り除き、レーザー治療で毛穴を引き締めることができます。
毛孔性角化症や毛孔性苔癬も、皮膚科での診断と基本治療を受けた後、美容目的で美容皮膚科での施術を検討することが可能です。
- 毛穴の炎症・かゆみ:皮膚科で薬物療法
- 毛穴の黒ずみ・開き:美容皮膚科で施術(ハイドラフェイシャル、ピーリングなど)
イボ・稗粒腫・粉瘤
イボや稗粒腫は、皮膚科での保険診療による除去が一般的です。液体窒素による冷凍凝固療法が主な治療法となります。美容皮膚科では、跡が残りにくい炭酸ガスレーザーなどを使用し、より短期間で美しく除去することに重点を置いています。
イボや稗粒腫をどの病院で治療するかは、「治療後の見た目の仕上がり」をどれだけ重視するかで決めると良いでしょう。
粉瘤は手術が必要な場合があり、必ず皮膚科または皮膚外科で診断を受けましょう。サイズや炎症の状態に応じて、適切な治療法が判断されます。
- イボ・稗粒腫:皮膚科(保険診療)または美容皮膚科(仕上がり重視)
- 粉瘤:皮膚科での診断・手術が必須
シミ・そばかす・肝斑・色素沈着
シミやそばかすの治療は、主に美容皮膚科が中心となります。レーザー治療や光治療、ピーリングなど、シミの種類や肌質に合わせた治療法が豊富にあります。
ただし、肝斑については、まず皮膚科で正確な診断を受けることが重要です。肝斑は一般的なシミとは治療方法が異なり、レーザー治療が逆効果になる場合もあります。診断後、内服薬での治療と並行して美容皮膚科での施術を検討しましょう。
- シミ・そばかす:美容皮膚科でレーザー治療など
- 肝斑:皮膚科での診断と内服薬、その後の美容施術を検討
ほくろ除去
ほくろの除去は、保険が適用されるかどうかが、大きな分かれ目となります。
急に大きくなる・形がいびつ・出血する、などは悪性の疑いがないか確認が必要です。皮膚科での組織検査をしっかりして医師の判断を仰ぎましょう。
一方、悪性の疑いのない場合は、美容皮膚科で見た目をきれいにする選択もあります。炭酸ガスレーザーなどを使用し、傷跡を最小限に抑えた除去が可能です。
- 病気の疑い:皮膚科で保険診療
- 美容目的:美容皮膚科で自由診療
脱毛
医療脱毛は、皮膚科と美容皮膚科のどちらでも受けられます。
皮膚科で施術を受ける一番のメリットは、万が一肌トラブルが起きた際に、その場で医師が迅速に対応してくれる安心感があることです。
一方、美容皮膚科は脱毛に特化した最新の機器を導入している場合が多く、より効率的で痛みの少ない施術が期待できます。さらに、脱毛と同時に美肌効果のある施術を組み合わせられるのも魅力です。
- 皮膚科:肌トラブルへの安心感
- 美容皮膚科:最新機器で効率的かつプラスのケアも期待できる
ピアス・ピアス穴トラブル
ピアス穴のアレルギーや炎症などのトラブルは、皮膚科での対応が適切です。金属アレルギーの検査や感染症の治療などを行います。
一方、美容目的でのピアス穴開けや、デザイン性の高い位置への施術は、美容皮膚科で対応している場合があります。必ず事前に施術の有無を確認しましょう。
- アレルギーや炎症:皮膚科
- 美容目的の穴あけ:美容皮膚科
併設クリニック・両方利用のメリット

最近は、皮膚科と美容皮膚科の両方を併設しているクリニックが増えてきました。こうしたクリニックは、肌の悩みを総合的に診てもらえるのが大きなメリットです。
たとえば、まずは皮膚科で炎症を抑える治療を受け、その後に美容皮膚科でニキビ跡のケアをするといったように、保険診療と自由診療を一つの場所でスムーズに使い分けられます。同じ医師に一貫して診てもらえるため、より効率的で最適な治療プランを立てやすいのも嬉しい点です。
また、通院の手間が省けるのも大きな利点です。保険診療で処方された薬と、美容目的の化粧品などを同じ場所で受け取れるため、何度もクリニックに通う必要がなくなります。複数のクリニックを使い分けるより、時間も費用も抑えられることが多いでしょう。
自分に合ったケアで前向きに

皮膚科と美容皮膚科、どちらに行けばいいか迷うときは、症状の性質と治療の目的を基準に考えましょう。
- 病気や皮膚トラブルをしっかり治したいなら、皮膚科(保険適用)
- 肌をきれいに保ちたい、美容目的なら、美容皮膚科(自費診療)
まず皮膚科で医学的な診断や治療を行い、そのあとで美容皮膚科で見た目の改善を進める、ステップを分けたアプローチがおすすめです。
自分の肌の状態や悩みに合わせて選ぶことで、無理なく安心して治療やケアができます。理想の肌に近づくための、ちょっとした道しるべとして参考にしてみてください。

